借地権の消滅と時効について!
借地権が消滅する場合と、その時効についてまとめております。
目次
借地権の取得時効!
土地の買い方ガイド
Aから土地を借り、権利金も払い、2年後に家を建て、地代もきちんと払ってきました。ところが、借りてから10年後の6月に、Bがやってきて、土地は自分のものだから、あらためて権利金300万円と今までの地代を払え、さもなければ家を壊して立ち退け、と寝耳に水の談判です。なんでもBは、地主の先代Cの弟で、AはCの養子ということだったが、その縁組届は、Cの病気中に勝手にAが出したもので、今度、裁判でそれがはっきりしたので、Aが観念して、Cの遺産を全部本当の相続人Bに返すことになったのだそうです。この場合はどうすればよいのでしょうか。
今まで約10年間、権利金も払い家を建て、地代もきちんと支払ってこられたあなたが、AではなくてBが土地の所有者だったということだけで、300万円と今までの地代を払わなければ、家を取り壊さなければならないというのは、いかにも不合理のように思われます。特に本問のAが勝手に養子縁組届けを出し、戸籍上はとにかくCの養子になっていたのですから、あなたのほうで手をつくして調べられても、養子縁組が偽物であったことを見破るのは、おそらく不可能と思われるだけに、なおさら、あなたとしては、わりきれない感じをもたれるでしょう。あなたの借地権が保護される可能性をみてみましょう。
あなたがAから土地を借りられた際、Aが真実の地主であると信じ、かつ、縁組届の無効を知ることは不可能でしょうからAを地主と信ずるについて過失がなかった、と考えらす。そして、2年後に家を建てて現在に及んでいるのですから、あなたは、民法一六三 条にいう「所有権以外の財産権を自己の為めにする意思を以て平穏且公然に行使する者」にあたります。したがって、Bが真実の地主だったとしても、10年間この状態が続いておれば、あなたは借地権を特効によって取得したことになります。とくに登記が、A名義になっていたときは、そういえます。
ただ本問では、いつから数えて10年間かが問題になります。土地を借りた年からとすれば、Bの申入のあった6月には、すでに時効によってあなたは借地権を取得してしまっていることになりますが、家を建てた年からだとしますと、まだ時効は完成していないことになり、あなたは、借地権の時効取得を主張できません。どの年をとるか、については判例もありませんが、公然の行使ということが時効取得の一つの要件となっていることを考えますと、土地に、あなたが借地人である旨の立札なりその他外部から一見してわかる標識を立てるか、借地権の登記をしていないかぎり、家を建てた年をとるべきではないか、と思います。そうでないと、あなたが土地を利用している事実が、真の地主はじめ一般の人たちに認識できないからです。本問で、あなたが家を建てるまで借りたまま土地を放浪されていたとしますと、残念ながら、時効による借地権取得を主張できないと考えます。
借地権の取得時効について解説しています。量が多くわかりやすいです。
最高裁判例検索結果!
不動産適正取引推進機構
1 H24.3.16 取得時効完成後、所有権移転登記前に第三者により設定された抵当権は、特段の事情がない限り、再度の取得時効により消滅するとされた事例 平22(受)336号 RETIO 86-096
2 H23.6.3 土地を時効取得したと主張する者が、当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして、国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき、確認の利益を欠くとされた事例 平22(受)285号
3 H23.1.21 抵当権設定登記後に賃借権の時効取得に必要な期間、当該不動産を継続的に用益したとしても、賃借人は公売による買受人に対し賃借権の時効取得を主張できないとした事例 平21(受)729号 RETIO 82-182
4 H18.1.17 通路部分の時効取得の成否が争われた事案について、不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たるためには、時効取得者が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識することが必要であるとされた事例 平17(受)144号 RETIO 65-050
5 H17.12.16 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣工認可がされていない埋立地につき、黙示的に公用が廃止されたものとして取得時効の成立が認められるとされた事例 平15(受)1980号
6 H16.7.13 農地所有者が、その土地を耕作して占有する者に行った明渡し請求に対し、占有者が、本件土地は先代が賃借権を時効取得したものを相続したものであるとした事案において、農地の賃借権の時効取得については、農地法3条の規定の適用はなく、知事等の許可がなくても時効取得が認められるとされた事例 平14(受)1459号 RETIO 61-072
7 H15.10.31 不動産の時効取得を原因とする所有権移転登記前に、前所有者によって設定された抵当権に対抗するため、起算点を後にずらして抵当権設定登記後の時効取得を主張・援用することができないとされた事例 平12(受)1589号
8 H13.10.26 農地転用許可を停止条件とする土地売買につき、転用許可手続未了であっても、代金を支払い、引渡しを受けた時点で自主占有が開始されたものとした事例 平13(受)94号
9 H13.7.10 被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の1人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるとした事例 平11(受)223号
10 H11.6.24 遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与を受けた者が、取得時効を援用したとしても、贈与に対する減殺請求による遺留分権利者への目的物についての権利の帰属は妨げられないとした事例 平8(オ)2292号
11 H8.11.12 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明する必要があるとした事例 平7(オ)228号
12 H7.12.15 登記簿上の所有名義人に対して所有権移転登記手続を求めないなどの土地占有者の態度が他主占有と解される事情として十分であるとはいえないとされた事例 平6(オ)1905号
13 H7.3.7 公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接する場合に、乙地の所有者が甲地のうち境界の全部に接続する部分を時効取得したとしても、甲乙両地の各所有者は、境界確定の訴えの当事者適格を失わないとした事例 平6(オ)1728号
14 H6.12.16 要役地の所有者が、自己所有地を提供したり費用を負担したりして、道路の拡幅、維持管理を行うとともに、通路として使用していたときには、要役地の所有者によって通路が開設されたものと認められるとし、その後20年以上通路として使用していたことにより通行地役権の時効取得が認められるとした事例 平6(オ)414号
15 H1.12.22 民法187条1項(占有の承継)は、権利能力なき社団等の占有する不動産を、法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるとした事例 平元(オ)1382号
16 H1.3.28 乙の土地所有権に基づく甲が占有する部分の明渡し請求が境界確定訴訟と併合審理されており、判決において、甲占有部分の乙の所有権が否定され、甲に対する明渡請求が棄却されたときは、たとえ、これと同時に乙主張とおりの土地の境界が確定されたとしても、占有部分については所有権に関する取得時効中断の効力は生じないとされた事例 昭58(オ)216号
17 S62.6.5 無権限者から土地を賃借し、平穏公然に土地を継続使用し賃料を支払ってきた土地の賃借人について、使用開始後20年の経過により、土地所有者に対する土地の賃借権の取得時効が成立したとされた事例 昭60(オ)615号
18 S60.3.28 残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が付された土地の売買契約において、代金の一部を支払わなかった買主が、契約時より民法162条の自主占有があったとした20年の取得時効の主張が認められた事例 昭56(オ)292号
19 S59.9.20 売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分が、その後完成した取得時効に基づく所有権移転登記手続請求権について効力を有するとされた事例 昭53(オ)1119号
20 S59.5.25 農地の譲受人が、当該譲渡について必要な農地調整法(昭和24年法律第215号による改正前のもの)4条1項所定の知事の許可を受けていないときは、特段の事情のない限り、農地を占有するに当たってこれを自己の所有と信じても、無過失であったとはいえないとされた事例
こちら不動産の時効、(取得、消滅)について最高裁が出した判例をまとめています。
少々難易度が高いのですが、勉強になります。
底地を相続してほったらかしにしていた。借地権者が底地を時効取得することはあるの?
底地.com
地代の支払いがあれば原則としてありません。時効取得の要件として所有の意思をもって平穏かつ公然と他人のものを占有する必要があります。地代を支払っているということは借りているということを認めているので自己の所有の意思をもって占有とはいえません。そのため借地権者さんが底地を時効取得することはありません。注意すべきなのは借地権者さんが地主さんに対して地代も払わず、明確な意思表示で『自分は借地権者ではなく土地の所有者だ』と主張して平穏かつ公然に(地主さんから異議が出ていない状態で)20年間占有すれば、悪意(=知っている)で時効取得することがあります。
底地の相続を放置していた際、借地権者が底地を時効取得することはあるのかという質問について、回答しています。
不動産賃借権は20年の占有で取得出来、善意無過失の場合は10年で取得可能!
MEDIA
不動産賃借権を時効によって取得するためには、「土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていること」が必要です。
その条件が揃っていれば、不動産賃借権は20年の占有で取得出来、善意無過失の場合は10年で取得可能です。
時効により取得出来る権利は、所有権や賃借権の他に、地上権や地役権といったものもあります。
また、時効によって権利を取得するためには、その権利の持ち主らしく振る舞う意思で占有することが必要です。
アパートの住人など、賃貸借契約に基づいて占有する者は所有権の意思が無いとみなされるため、所有権の時効取得は不可能です。
こちら宅建の資格取得サイトですが、民法の不動産に関する事項について解説がされています。
資格勉強のため要点がまとまっており、わかりやすいです。