借地権を相続するメリット
借地権を相続した際のメリット、デメリットを整理しています!
目次
借地人から見るメリット・デメリット
借地権総合相談室
借地人のメリット
では、土地を借りて建物を建てて住んでいる借地人から見た
メリットとデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
この点、土地を買うより安くつくかどうかは、
その地域の土地の価格や地代の相場にもよってきます。
土地の賃貸借契約をする場合、はじめに権利金という
大きな額を支払って、その上で地代を支払うこともあります。
長く地代を支払っていけば、
土地を普通に買うよりコストがかかるケースもあり得るのです。
もっとも親や祖父の代から借りているという場合、
地代はある程度の年数分をまとめて支払っておくことも多いので、
子供世代はほとんど負担なく利用できるメリットがあります。
また借りた土地とはいえ、借地借家法に守られているため、
追い出される心配がありません。
普通借地権の存続期間は最低30年以上と長く、
実際にはもっと長い期間で設定されている場合が多いです。
しかも、地主が更新拒否するには正当事由や多額の立ち退き料の
支払いが求められるので、半永久的に利用可能です。
居住用建物のための定期借地権を新たに設定する場合も、
存続期間は50年以上で定めなければならないので、
少なくとも自分が暮らしていく間に追いだされるような
契約はしなくて済みます。
さらに借地権は相続ができるので、借地権の設定者が
亡くなった後も、家族は安心して暮らすことができます。
また、まるで自分の土地のように暮らしながらも、
毎年の固定資産税や都市計画税は、
あくまでも土地所有者が負担するため支払う必要はありません。
借地人のデメリット
これに対してデメリットですが、地代の値上げを巡るトラブルや、
建物の建て替えや増改築、建物を売り払って引越したいなどと
考えるときに、地主との間で制限が生じます。
地代については双方に地代の増減請求権がありますが、
当事者で話し合いがつかないと裁判に発展する場合もあります。
また、賃貸借契約の中に建物の種類や構造が定められていたり、
増改築などの制限が盛り込まれている場合、
老朽化した建物を建て直す際に、地主の許可が必要なのです。
これも許可が得られなければ裁判になる可能性があります。
そして一番厄介なのが、建物の売却、借地権の譲渡のケースです。
土地は他人の土地ですが、
建物は借地人の自己所有となっています。
本来、自分の建物を誰にいつ売却しようが自由なはずです。
しかし借地の場合、建物だけ売って、借地権は譲らない、
つまり建物は使ってもいいけど
土地は使えないよというわけには行きません。
そこで建物を譲渡すると、
借地権も一緒に移転することになります。
この点、借地借家法では借地権の譲渡や転貸には
地主の承諾が必要と定められています。
借地契約は地代を滞りなく支払ってくれるか等、
お互いの信頼関係に基づいて設定されているので、
見ず知らずの他人に勝手に移転されては困るからです。
この地主の承諾が得られないと、
やはり許可を求める裁判を起こす必要があります。
また、借地上の建物は高く売れない可能性があります。
この点、借地権は強い権利であり相続税評価上、
高く評価されると言いましたが、それはあくまで
相続税負担上の話であり、実際の売買とは異なるのです。
借地はあくまで借地であり自己所有ではないわけですから、
排他的な権利である所有権と違い制約を伴う分価格は
低くなってしまい、思ったような価格で売れない場合があります。
借地人が相続する際のメリットデメリットを整理しています。借地人の目線で書かれているため一般の方にお勧めです!
地主から見るメリット・デメリット
借地権総合相談室
地主のメリット
では、人に土地を貸すことで地主にどのようなメリット
あるいはデメリットがあるのか見て行きましょう。
まず、メリットからです。
メリットの1番は土地の有効活用と地代収入です。
日本の面積は狭く、約70%が森林で占められています。
つまり住宅地や商業用地などとして活用できる面積は、
そもそも少ないのです。
にも関わらず、使っていない土地をそのままにしておくとなれば
国民にとっても大きな損失になります。
自分では使わないなら、人に貸して活用してもらうべきなのです。
もちろん、借地権を設定して相応の地代で貸すことができれば、
地主には地代収入が入ります。
また人に土地を貸すと、税金面でもメリットが高くなります。
1つめは相続税の軽減です。
相続税には控除額というのがあり、
現在のところ5000万円+1000万円×法定相続人の数までは
相続税がかかりません。
相続税が発生する人は亡くなった方に対して極めて低い割合で
平成22年度でいえば、死亡者約120万人に対し相続税が
課税された人は約5万人で、全体の4.2%程度に過ぎません。
しかしこの大半が、土地を
たくさん所有している資産家と言われています。
もっとも資産家とは言われても、当人たちにしてみれば、
土地は所有しているけれど、
相続税を支払う現金はないということが多いのです。
地主のデメリット
できれば相続税の負担を減らしたいと考え、
様々な節税対策を行うことになります。
相続税の課税対象とされる土地は時価で評価されるのではなく、
路線価や固定資産税評価額という
時価の60%~70%相当の価格で評価が行われます。
時価に比べればだいぶ軽減されますが、
さらに軽減する方法として借地権の設定があります。
借地権は借地人を強く保護する権利で、一度貸せば、長く自分は
使うことができなくなるため、その負担分が控除されるのです。
借地の相続税評価額は、土地の相続税評価額×(1-借地権割合)
となり、相続税評価額5000万円の土地で借地権割合が
60%であれば、2000万円まで下がります。
もう1つが固定資産税や都市計画税の軽減です。
土地を全く使わず放置し何の収益を生まなくても、
毎年、固定資産税や都市計画税が課税されます。
その負担は意外に大きいものです。
その上、近隣に迷惑をかけないよう草刈りをしたり等の
手間や費用もかけなければなりません。
しかし他人に土地を貸せば、これを地代の一部から賄うことが
できますし、固定資産税や都市計画税の軽減が受けられるのです。
他人に土地を貸している間も、
固定資産税や都市計画税は土地の所有者に課税されます。
商業地等の固定資産税や都市計画税は時価の70%を
課税標準として税率がかけられます。
これに対し住宅用地の場合、課税標準額が6分の1に軽減され、
支払う税金が大きくダウンするのです。
他人に貸した土地でも、
借地人が住宅を建てて暮らしていれば住宅用地に該当します。
これに対し地主のデメリットの1番は、
自由な使用ができなくなることです。
たとえば親の代に貸した土地は、
子供世代も地主の地位を相続します。
しかしその子供はその土地でパン屋を開きたいとか、
レストランを経営したい、もっと地代を支払ってくれる人に
貸したいなどと思うかもしれません。
しかし普通借地権にせよ定期借地権にせよ、
存続期間が長く、普通借地権にあたっては
正当事由がない限り更新拒否が認められません。
仮に正当事由が認められたとしても、高額の立ち退き料を
支払わなければならないケースがほとんどです。
もう1つのデメリットが、
借地人や近隣住民とのトラブルの発生です。
借地人と地代の額や更新などを巡ってトラブルが生じる場合も
ありますし、借地人が何か近隣に迷惑をかける行為を行うと、
地主にクレームが入る場合が多くなります。
借地人が借地権を相続した際に、地主側に起こりうるメリットデメリットを整理しています。
相続される側の目線で解説されているため、地主の方は必見です。